研究開発用 FT-IR および QCL 顕微鏡  

HYPERION II

HYPERION II は、柔軟な拡張性を備える研究開発用の多目的FT-IR顕微鏡であり、さらに QCL 赤外レーザーによるイメージング機能を1つの装置に組み込むことが可能です。

FT-IRとQCLの融合

分析力とイノベーション

強力、正確、柔軟

リサーチ赤外顕微鏡 / イメージングプラットフォーム

HYPERION IIの新機能:

HYPERION II のプロダクトマネージャーであり、開発を最終段階に導いた Marten Seeba が、HYPERION の力強い歴史と新たな機能について説明します。

QCL イメージング機能の統合:

ブルカーの QCL 開発担当であり、レーザー顕微鏡の責任者である Niels Kroeger-Lui は、FT-IR と QCL を組み合わせることが赤外線顕微鏡の真のゲームチェンジャーである理由を説明します。

ブルカー特許、空間コヒーレンスの低減:

開発エンジニア Sascha Roth は、特許取得済みの空間コヒーレンス低減技術の開発に関する詳細な洞察を提供します。

QCL による FT-IR 顕微鏡の拡張|赤外レーザーイメージング

HYPERION II は、赤外顕微鏡における技術革新です。赤外イメージングを回折限界に到達させ、顕微 ATR における基準を作りました。さらには透過・反射・ATR のすべての測定モードにおいて FT-IR 顕微鏡と赤外レーザーイメージング顕微鏡機能 (ILIM) の両方を 1 台で実現する、世界初のシステムです。

HYPERION II の主な仕様:

  • 顕微 FT-IR 用検出器の選択:
    液体窒素冷却式 MCT 検出器
    (広帯域、中帯域、狭帯域)
  • 電子冷却式 MCT 検出器(TE-MCT)
  • 赤外スペクトルイメージング用
    フォーカルプレーンアレイ検出器
    (FPA、64 x 64 または 128 x 128 素子)
  • QCL 赤外レーザーによる
    イメージングモジュールオプション(ILIM、レーザークラス 1)
  • 対物鏡の選択: 3.5x / 15x / 36x IR、20x ATR、15x GIR、4x/40x(観察専用)
  • 波数範囲拡張 – 近赤外から遠赤外まで
    (NIR-MIR-FIR)
  • 視野絞りの選択: 標準ナイフエッジアパーチャ、電動ナイフエッジアパーチャホイール、近赤外用メタルアパーチャ
  • アクセサリオプション: マクロ ATR イメージングアクセサリ、冷却/加熱ステージほか
  • 観察用オプション: 暗視野照明、蛍光照明、可視偏光子、赤外偏光子ほか

HYPERION II の特長:

  • すべての測定モードにおける赤外スペクトルと可視像の完全一致
  • 回折限界に迫る空間分解能と優れた感度の FT-IR 顕微鏡およびイメージング顕微鏡(FPA 検出器採用)
  • 世界初、FT-IR + QCL 統合システム
    赤外レーザーイメージングオプション
    (ILIM、レーザークラス 1)
  • すべての測定モードに対応するQCLイメージングオプション(透過、反射、ATR)
  • 特許技術により空間コヒーレンスを低減した高感度・高速レーザーイメージング
  • 高速イメージング:
    毎秒 0.1 mm2 (FPA、フルスペクトル)
    毎秒 6.4 mm2  (ILIM、波数固定時)
  • 液体窒素なしで高い感度と空間分解能を実現した TE-MCT 検出器オプション
  • エミッション測定および波数拡張オプション

HYPERION II アプリケーション:

  • ライフサイエンス | 細胞イメージング
  • 製薬・医薬
  • 放射率測定 (LED 等)
  • 障害と根本原因の分析
  • 法科学・科学捜査
  • マイクロプラスチック
  • 産業研究開発
  • ポリマーおよびプラスチック
  • 表面特性評価
  • 半導体

開発者・革新者のためのリサーチ顕微 FT-IR

HYPERION II ほどユーザーのニーズを具体化した赤外顕微鏡はありません。柔軟性、正確性、構成の自由度、適用性、そして常に可能性の限界に挑戦しています。

すべてをコントロールする

何よりも、装置に完全にアクセスできることです。実験条件、試料、そして測定パラメータへのアクセス。これこそが  HYPERION II の基本であり、完全なコントロールを提供することが最も重要であり価値のあるものと考えます。

FT-IR によるピンポイント測定、マッピング測定、あるいはイメージング測定。検出器や対物鏡の使い分け。さらには試料の環境制御など、あらゆる点で測定系を自在にコントロールが可能で、より良い結果を得ることができます。

これはブルカーのもう1つの赤外顕微鏡、 LUMOS II との明確なコンセプトの違いです。LUMOS II ではほぼすべての操作を自動化しているのに対して、HYPERION II はオペレータの意図に応える精密ツールと言えます。

赤外顕微鏡 HYPERION II(MCT検出器仕様)

不朽の業績

多くのユーザーは、その前身を通じて HYPERION II の強みを知っています。HYPERION は、約20年にわたり赤外顕微鏡とイメージングの分野で革新をもたらしてきました。HYPERION が優れた FT-IR 顕微鏡であると認められた特長は今も健在であり、より優れた性能とスピードを求めて改良したに過ぎません。

液体窒素冷却 MCT 検出器、電子冷却 MCT 検出器、フォーカルプレーンアレイ検出器、可視および赤外強調ツール、豊富な専用アクセサリーなど、HYPERION II は日々の研究に必要な機能のすべてを備えています。

最終的に、確立された価値ある手法を維持することで顕微 FT-IR およびイメージングシステムとしての基準をもう一度確立するとともに、イノベーションリーダーとしての名に恥じないよう、エキサイティングな新技術の導入を進めてきました。

HYPERION II (左)ILIMと専用試料室付仕様、(右)フォーカルプレーンアレイイメージング検出器仕様

QCL 赤外レーザーイメージング
 

QCL システムと FT-IR を1台で実現

FT-IR と QCL を1台の装置に組み込んだ初の赤外顕微鏡です。これにより、ライフサイエンスや材料研究の分野に全く新しい扉を開くことができます。

FT-IR スペクトルを収集し、その情報をもとに QCL を使って調べたい波数を選択すると、瞬く間に高精度なケミカルイメージを得ることができます。

この FT-IR と赤外レーザーイメージングによる全く新しいアプローチにより、ユーザーに対して新しいアプリケーションを生み出し、既存の実績あるアプローチをさらに向上させることができる機能を提供します。

卓越した性能を持つ真の QCL 顕微鏡

HYPERION II は、最先端の FT-IR 顕微鏡でありながら、妥協のない QCL 顕微鏡を提供します。HYPERION II は、データの後処理なしで比類のない赤外レーザーイメージを実現するために、新たなコヒーレンス低減技術を開発し、特許を取得しました。

解説: 古典的な FT-IR では、空間コヒーレンスは問題になりません。一方、QCL を用いた顕微赤外測定では、光源の特性上、空間コヒーレンス現象の発生を避けることができません。その影響は赤外イメージやスペクトルにフリンジやスペックルとして現れ、ケミカルイメージング解析の妨害となります(参照: DOI: 10.1002/jbio.201800015)。

実際、試料に関する化学情報を、散乱光子の位相関係を反映する物理情報から分離することは、些細なことではありません。HYPERION II は、この問題に現実的に取り組み、スマートなハードウェア設計によって解決し、アーチファクトのないケミカルイメージデータを取得することが可能となっています。

 

FT-IR と QCL 分光法の比較

両者を比較すると、同じ作業を同じようにこなせると思われがちですが、これはよくある誤解です。FT-IR と赤外レーザーイメージングにはそれぞれ異なる利点があり、両者を実用的に組み合わせることで初めて最高の結果を得ることができます。

多くの科学者や研究者は、FT-IR の普遍性を重視していることを我々は知っています。彼らの多くは、比較する基準を持たない 1 つ最先端の技術に制限されることを好みません。幸いなことに、HYPERION II は、優れた FT-IR イメージング顕微鏡であると同時に、前衛的な QCL 顕微鏡でもあります。

私たちはこの二重性に対処し、QCL 技術が高 S/N のデータを高速に記録する場合でも、中赤外領域の小さな範囲に制限されています。繰り返しになりますが、HYPERION II のコンセプトに忠実です。あなたが選択し、あなたが完全にコントロールすることができます。

ポリスチレンビーズの QCL 赤外イメージング。 左:空間コヒーレンスの影響が現れている中赤外レーザーイメージ。右:コヒーレンスの影響を低減させた状態の中赤外レーザーイメージ。出典: Arthur Schönhals, Niels Kröger-Lui, Annemarie Pucci, Wolfgang Petrich; On the role of interference in laser-based mid-infrared widefield microspectroscopy, Journal of Biophotonics, 2018, Volume 11, Issue 7, DOI: 10.1002/jbio.201800015.


 

HYPERION II 赤外レーザーイメージング顕微鏡の試料ステージに組織試料をセットする様子

IR顕微鏡アプリケーション(FPA、MCT、QCL)

生体組織解析

生命科学のためのQCL技術の可能性は大きいです。ここでは、扁桃組織のミクロトーム片に関する赤外レーザーイメージを可視観察像に重ね合わせて解析しています。                              

材料科学

赤外イメージにより、多層構造の解析が容易になります。ここでは自動車の塗料片を高分解 ATR イメージングにより解析することで、自動車事故の様子を把握することができました。

法科学

赤外顕微鏡は法科学の分野でも優れたツールの1つです。このケースでは、繊維の起源を示す明確な証拠を得るために繊維を検査しました。ナイフエッジアパーチャにより、最適なスペクトル品質が確保されました。

医薬品開発

混合物の成分を決定するのは、これまでになく簡単なことです。この事例では、医薬品のペレットを分析して不純物を検出しました。不純物(赤)が原薬のマトリックス(青)からはっきりと浮かび上がっています。

地質学と鉱物学

赤外レーザーイメージングは、鉱物や地球化学的特性の評価にも有用です。この例では、赤外反射率の違いに基づき酸化物鉱物の区別を行っています。

マイクロプラスチック分析

マイクロプラスチック分析では、FT-IR イメージングが最適なアプローチとなっていますが、赤外レーザーイメージングもそれに追いついてきています。このソフトウェアは、粒子レポートや統計を含め、自動化されたマイクロプラスチック分析を提供します。

OPUS 8.7  | HYPERION II | 2021年Q3リリース情報

新機能:適応的K平均クラスタリング機能による高性能ケミカルイメージング生成法

この新しい機能は、当社の定評あるクラスター分析機能の論理的な次の開発ステップです。適応的K平均クラスタリング機能は、新しいアルゴリズムに基づいており、イメージングまたはマッピングデータ内のスペクトル分散を監視なしで自律的に決定できます。

  • このアルゴリズムでは、試料に含まれる化学物質を自ら予測することができるため、ピーク強度を用いて量的に解析したり、時間をかけて検索する必要がなくなります。
  • 本機能は、あらゆる種類のケミカルイメージングに適用でき、未知試料の分散状態や、大きなデータセット内に隠れている微小構造の分析などにおいても有効です。
  • 分析と解析を可能な限り簡単にし、貴重な時間を節約することができます。

新機能:3Dスペクトルデータからクラスを識別する”クラスターID”機能

新規クラスターID機能により、OPUSの標準機能(スペクトル検索、クイックコンペア、判別テスト)を使用して、イメージングおよびマッピングデータ内のクラスターを識別することができます。

  • 粒子、ラミネート層、医薬品錠剤の成分など、不均一な材料について各成分が自動的に分類され、化学的同一性を簡単に決定することができます。
  • 分析されたすべての構造物の量、サイズはもちろん、同一性に関する信頼性の高い包括的な統計レポートが提供され、粒子および技術的な清浄度分析を新しい自律レベルに導きます。

機能アップデート:「パーティクルファインド(粒子検出)」機能に新たな粒子検出法が追加

実績のある「パーティクルファインド」機能が、可視画像だけではなくケミカルイメージにも適用できるようになりました。 これにより、LUMOS IIを用いて測定し作成されたケミカルイメージデータについても粒子の検出を行うことができます。

  • コントラストの低い構造物や、オフホワイト色のフィルターメンブレン上にある透明な粒子やファイバーの認識は難しい場合がありますが、本機能を用いてケミカルイメージに対してパーティクルファインド機能を実行することにより、イメージングまたはマッピングデータにおける粒子の量とサイズを決定することができます。
新機能「適応的K平均クラスタリング機能」を用いて、自律的に作成されたケミカルイメージ。
酸化アルミニウムフィルター上で自動認識された粒子。 粒子は、新機能「クラスターID」を用いてサイズと同一性によって即座に分類されます。

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