アプリケーションノート -  磁気共鳴

ブルカーの品質管理用
蜂蜜プロファイリングモジュール

ブルカーが2015年に発売したNMRによる食品検査用の新しい蜂蜜プロファイリングモジュールは、すぐに大手食品検査ラボや蜂蜜販売業者の間に広まりました。

近年、食品の品質に対する意識が高まっており、オーガニック食品や健康食品への関心も高まっています。そうした中、蜂蜜は特に人気の高い食品の一つになっています。しかし、蜂蜜の需要は着実に拡大しているものの供給は不足しており、そのことが蜂蜜生産の大きな課題となっています。

現在、蜂蜜の生産は法律で保護されており、その真正性と品質を保証するために導入された様々な規制の対象となっています。蜂蜜は消費者に提供される前に品質管理ラボで検査され、偽装や産地・容量の不正表示がないかチェックされます。

ラボでは、蜂蜜を分析するための高度な技術を益々必要とするようになっています。なぜなら、従来の手作業による方法には、スキルやテクニックが必要であり、それを習得し実践できるようになるまでには長い時間を要するからです。

2015年にブルカーが発売したNMRによる食品検査用の新しい蜂蜜プロファイリングモジュールは、すぐに大手食品検査施設や蜂蜜販売業者の間に広まりました。

独立企業のFamille Michaud Apiculteursは、この新しいモジュールを採用し、NMR技術を用いたソリューションを手に入れた最初の蜂蜜販売業者です。ラボのマネージャーであるPatricia Beaune氏は、最近のインタビューで、蜂蜜のプロファイリングの重要性、直面している主な課題、新しいモジュールが同社にもたらしたメリットについて語ってくれました。

Beaune氏は、蜂蜜を購入する際に、その蜂蜜が安全か、本物か、天然かを消費者が絶対的な確信をもって見分けることは、検査をしない限り不可能だと説明しています。したがって、大量の蜂蜜をスクリーニングするための適合技術を備えた有能な品質管理ラボが必要なのです。

ミツバチは世界のどこからでも花蜜を集めてくるため、蜂蜜が生産された環境を正確に把握することは不可能です。この環境を「テロワール」といい、蜂蜜の味や香りに大きく影響します。

「私たちは、消費者が口にする蜂蜜が正しい蜜源植物・産地のものであることを提示し、消費者が購入する蜂蜜の味と香りを保証しなければなりません」とBeaune氏は言います。蜂蜜が特定の地域のものであることを確認できなければ、会社は法令を満たせないのです。

ラボでは、毎年検査した蜂蜜の30%が不適合として受入拒否されます。検査によって蜜源植物や産地が製品の表示と異なっていることが判明する場合もあります。例えば、「ハンガリー産アカシア蜂蜜」と謳われていたものが、分析の結果、中国産であることが判明した事例もあります。

もう一つの重要な問題は偽装です。成分が足されたり除かれたり、あるいは糖類やアミノ酸の濃度が通常と大きく異なる場合があります。Beaune氏によると、残念ながら「小麦、サトウキビ、米、さらにはマヌカ由来の糖など、蜂蜜にあるはずのない外部由来の糖」が見つかることがあるようです。

ミツバチが花蜜を集めるときには一緒に花粉荷を集めます。従来の試験方法では、ラボでこの花粉荷を抽出し顕微鏡で分析して蜂蜜の特性を調べ、同定を行っていました。しかし、このプロセスは完全に手作業であり、蜂蜜に含まれる可能性のある天然由来の花粉荷は400種類以上に及ぶため、高度な能力とスキルを要求されます。

ラボでは従来の検査方法をいくつか組み合わせていました。一つは同位体比検査法で、蜂蜜中の炭素原子を分析する方法です。次に、外国産の酵素またはオリゴ糖が入っているかどうかを検出する技法を使います。全部で3~4種類の検査を行うことになり、これには6日かかりました。

現在は、NMR フードスクリーナーを使ってこの検査をわずか20分で行うことができます。この技術は、幅広い蜜源植物と産地を表す数千の基準プロファイルが保存されたデータベースを利用します。

Beaune氏は「未知のサンプルを分析する場合、フードスクリーナーが生成するプロファイルをこのデータベースと比較することで、サンプルの蜜源植物と産地を確認、検出することができます」と説明します。

このフードスクリーナーは、糖のトレーサーを使って外部由来の糖やシロップの添加を特定することもできます。

Famille Michaud Apiculteurs社は、蜂蜜販売業界で高く評価され、基準となる製品であるとみなされています。同社は毎年10万点以上のサンプルを処理し、2013年には高い技術的・科学的能力を持つことを証明するCOFRAC/ISO70025認証を受けました。

Beaune氏によると、これまでに多数の品質管理ラボが蜂蜜にNMRスクリーニングを利用して認証を受けています。

Beaune氏は「2017年にはこの方法でISO 70025認証を受けられると考えています。これによってNMRプロファイリングが蜂蜜検査法の基準になるでしょう」と述べています。