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1H-NMR血漿メタボロミクス研究で明らかになったオメガ3多価不飽和脂肪酸補給の多様な効果

1H-NMRを用いたリポタンパク質サブクラス分析は、栄養補助による血漿メタボロームへの影響を調べる実用的な手法であることが示されています。

1H-NMRを用いたリポタンパク質サブクラス分析は、栄養補助による血漿メタボロームへの影響を調べる実用的な手法であることが示されています」

オメガ3 多価不飽和脂肪酸( Polyunsaturated Fatty Acid, PUFA)カプセルを用いた栄養補助は、心血管疾患や心臓突然死のリスクを削減する効果的な手段の一つとして広く奨励されています。

多価不飽和脂肪は飽和脂肪と比較して心血管疾患につながるリスクが有意に低いとされています。血管内壁に脂肪性プラークが形成されると、動脈の狭窄や閉塞により心臓発作、脳卒中、血管性認知症などの発症リスクが増加しますが、多価不飽和脂肪はこの脂肪性プラークの形成を抑制するのです。PUFAの摂取量を増やすことで心臓血管の健康に好影響がみられることを裏付ける、臨床試験のエビデンスは数多く存在しています。

PUFAは生理活性脂質であることから、血中トリグリセリド値を下げるだけではなく、様々な生物学的プロセスに変化をもたらすと考えられます。事実、PUFAに関しては心血管以外にも、例えば糖尿病や癌といった種々の疾患の予防と治療に役立てようと、研究が進められているのです。ただし、そうした臨床試験からは互いに矛盾する結果も得られています。

PUFAの付加的な影響の性質についてはまだ十分に検討されていないため、認められているPUFA補給の利点が潜在的なリスクを上回るものであるかどうかを判断するのは困難です。特に高齢者の場合、PUFA補給を勧められる可能性が高くなるので、これは重要な課題になると考えられます。

健康な高齢者を対象とした最近のメタボロミクス研究において、PUFA補給の効果が検討されました。健康な成人(18~35歳12例、65~85歳12例)にPUFAであるエイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸を栄養補助食品として4ヵ月間摂取させ、PUFA補給の前後に採取した空腹時の末梢血検体を、Bruker Avance IVDr 600 MHzシステム(Bruker Avance III HD)を用いた1H NMRにより分析されました。手順は、サンプルの調製と分析に関する標準操作手順書(SOP)に従っています。NMRのデータを用いてリポタンパク質サブクラス分布を調べるために、Bruker IVDrリポタンパク質サブクラス分析法(B.I.LISA)が用いられました。この研究の結果、PUFA補給前には、若年集団と高齢集団のリポタンパク質濃度およびトリグリセリドの濃度の差はわずかでした。ところが、PUFA補給後には顕著な違いが認められています。予想した通り、トリグリセリドの総量はPUFA摂取量が多いほど減少しています。超低比重リポタンパク(VLDL)粒子の濃度はPUFA補給によって減少し、コレステロールの量も、5つのVLDL画分のすべてで減少したことが分かりました。高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度への影響は小さかったにもかわらず、異なるHDLサブクラス間の相対比率は大きく変化していました。

さらに、1H-NMR法と質量分析法では4ヵ月間のPUFA補給後に、各種リン脂質、コレステロールエステル、ジグリセリド、トリグリセリドの顕著な変化が明らかになりました。また、その他のヒドロキシプロリン、キヌレニンなど多くの重要な代謝物の濃度にも有意な変化がみられました。クエン酸塩、グリセロール、乳酸、ミオイノシトールといった幾つかの注目すべき代謝物にも、統計的に有意ではないものの、25%以上の増加が報告されています。

これらの新たなデータは、PUFAの補給はトリグリセリドのみにとどまらず、タンパク代謝やキヌレニン経路、糖代謝などにも影響を及ぼす可能性を示唆しています。このような影響について検討する今後の研究が期待されます。

Bruker NMRシステムは、臨床診断にはご利用いただけません。