アプリケーションノート -  磁気共鳴

ESRによるインスタントコーヒーの抗酸化能の評価

インスタントコーヒーのラジカル消去能

インスタントコーヒーのラジカル消去能

カフェインは世界で最も一般的に使われている薬剤の一つです。中枢神経系の刺激剤であり、コーヒー豆、お茶の葉、カカオ豆やマテ茶の葉など、60種類以上の植物の葉、種子や果実に含まれています。

眠気覚ましや疲労軽減、集中力を高めるために、毎日何十億もの人が主にコーヒーからカフェインを摂取しています。さらに、注意力向上や痛み止めの効果を高める市販薬の成分としても使用されます。

カフェインの効果については、健康な人から何らかの疾病を抱えている状態の人まで、幅広く研究が行われてきました。結果的に、カフェインがもたらすであろう効果と有害な作用について多くの主張が交わされてきました。しかし、全ての主張に確固とした科学的根拠があるわけではありません。

カフェインが役に立つと考えられているのは、血管壁、タンパク質分子、DNA、炭水化物および膜脂質の酸化を促すことで知られるスーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルとアルキルオキシラジカルなど、フリーラジカル蓄積の軽減です。

フリーラジカルが与えるダメージは細胞の正常な機能と複製能力を妨げ、早期老化や多くの疾患につながります2。フリーラジカルによって引き起こされるダメージのことを酸化ストレスと呼びます。酸化ストレスを軽減するためには、野菜、果物、ベリー類、植物油、蜂蜜など、自然の抗酸化作用を持つ食品をふんだんに取り入れた食事が推奨されます3

多くの人にとってコーヒーは抗酸化物質の摂取源になりますが、フリーラジカルの消去能は、コーヒー豆の品質あるいは焙煎、抽出方法によって大きく異なります。

抗酸化能を測定する技術は様々ですが、食品の評価に推奨されている方法はいずれも抗酸化能の直接の尺度にはなりません。

代わりに、酸化の影響を判断するもので、間接的に抗酸化能の指標を示しているにすぎません。温度差や濃度の違い、または解析のタイミングによって数値が変わるため、測定方法によって矛盾する結果が生じます。

しかし、電子スピン共鳴(ESR)を用いることで、フリーラジカルを直接定量できます4。最近まで、この方法を使用したコーヒーのフリーラジカル消去能力を測定する報告はありませんでした。

研究者はESRスピントラップ法を使用して、インスタントコーヒー抽出物のヒドロキシルラジカルおよびアルキルオキシラジカルの消去能力を発表するようになりました5

日本で市販されている4種類のインスタントコーヒーをお湯で溶かし、ヒドロキシルラジカルおよびアルキルオキシラジカルが含まれているリン酸緩衝液に加えました。抗酸化能は100 kHz磁場掃引が可能なBruker X-バンドESR(EMX-Plus)を用いて測定されました。

その結果、測定されたラジカル消去能力は、ブルーベリーと比べて、インスタントコーヒーでは平均20倍以上でした5。コーヒーの濃度が高いほど、抗酸化能も上昇しました。

安価なブランドと比べて価格が高いインスタントコーヒーの方が高い抗酸化能を示したため、豆の品質が高いほど、より優れたフリーラジカル消去効果が得られる可能性が考えられます。

その後のESR解析によって、インスタントコーヒーが、ヒドロキシルラジカルおよびアルキルオキシラジカルに対して高いラジカル消去能力を有することが確認されました。

参考文献

  1. Cappelletti S, et al. Caffeine: Cognitive and Physical Performance Enhancer or Psychoactive Drug? Curr Neuropharmacol. 2015;13(1):71–88.
  2. Harman D. Aging: Minimizing free radical damage. Anti-Aging Med. 1999;2:15–36.
  3. Sies H. Strategies of antioxidant defense. J. Biochem. 1993;215:213–215.
  4. Delincee, H. Improvement of the ESR Detection of Irradiated Food Containing Cellulose Employing a Simple Extraction Method. Radiat. Phys. Chem. 2002;63:455‑8.
  5. Kameya H. Evaluation of Hydroxyl Radical and Alkyl-oxy Radical Scavenging Activity of Coffee by ESR Spin Trapping Method. Journal of Food Science and Engineering 2017;7:305‑311.