プローブ

CPMAS プローブ

Cross-Polarization Magic Angle Spinning ―CPMAS プローブは、さまざまな生体サンプルや工業材料サンプルの分析に最適です。

Brukerは、最大 MAS速度が160 kHz までの様々な核種の観測に対応した多種多様なCPMAS プローブファミリーを提供しています。

 

固体 高分解能スペクトルを観測するための最も主要な技術は、マジック角回転 (MAS) です: サンプルを磁場に対して 54.7° に傾斜した軸を中心に高速で回転させます。 この機械的なサンプルの回転により、線幅を大きく広げ、シグナルの重なりを引き起こす異方的相互作用のほとんどが除去されます。一方、液体 NMR では、通常、溶解した分子のブラウン運動によって異方性が完全に除去されるため、機械的なサンプルの回転を必要とせずに高分解能のスペクトルが得られます。

MAS は、通常、セラミック製の中空の円筒にタービンキャップを取り付けた、いわゆるローター(図 1)にサンプルを充填して行います。MAS NMR プローブには、いわゆるステーター(図 2)があり、ローターの低摩擦での回転を可能にするベアリングシステムと、ローターのタービンキャップにガス流を注入してローターを目的のスピードで回転させるドライブシステムで構成されています。

NMR 測定では、サンプルが充填されたローターを NMR プローブ内のステーターに挿入し、ベアリングとドライブ系にガスを供給してローターを回転させます。回転速度は光学的に測定され、ドライブとベアリングの圧力を調整することで精密に制御されます。 Bruker独自の MAS ローター/ステーター・システムは、最高速度と回転安定性に優れることで知られ、多くの NMR ラボで事実上のスタンダードとなっています。

最適な回転周波数は複数の要因によって決まりますが、最も重要なのは、対象となる核と分子の運動性や常磁性といったサンプルの特性です。技術的には、到達可能な最大回転周波数は、遠心力で大きな応力を受けるローターセラミックの強度と、ローターの円周速度がベアリングガス中で音速未満でなければならないことで決まります。 したがって、ローターは、下表に示すように、必要な回転速度で最大のサンプル量が得られるように、さまざまな径のものが用意されています。

図 1:さまざまな回転速度に対応するさまざまな径の MAS ローター

 

図 2:Bruker MAS ステーターの概略図
Max. MAS Speed [kHz] Rotor Diameter [mm] Rotor Volume [µl] (Rounded)
7 7 360
15 4 106
24 3.2 47
42 1.9 13
67 1.3 3
111 0.7 0.6
160 0.4 0.12

固体 NMR における 2つ目の主要な技術は、交差分極 (CP) です。これは、核磁化を異種核間双極子相互作用を介してあるタイプの核から別のタイプの核に移す分光学的手法です。通常、磁化はプロトン(1H)から 13Cや  15Nなどの X 核に移動します。プロトン(1H)は存在量が多く、分極が高いので、感度が大幅に向上します。磁化移動は一般に「コンタクトパルス」と呼ばれる特殊な RF パルスをサンプルに照射することにで行います。Brukerの CPMAS プローブは、最適なコンタクトパルスが可能になるように RF 性能が最適化されています。 Brukerの CPMAS プローブは、あらゆる CP 条件、特にゼロ量子、二量子、また、二重 CP トランスファーにおいて優れた性能を発揮することで知られています。

Brukerの CPMAS プローブは、スタンダードボア (SB) とワイドボア (WB) のマグネットに対応しています。

デモの予約

弊社の超高速 160 kHz CPMAS プローブの可能性を体験して頂くために、弊社の Ettlingen アプリケーションラボでお客様向けのデモをご予約ください。このプローブでより高い分解能と T2' 時間の向上が得られます。弊社の経験豊富なアプリケーション・スペシャリストチームが、弊社の最先端の装置を使っての NMR 測定をご案内し、すべての機能を実際にお見せします。直接ご来社いただくことができない場合は、リモートデモやサンプルの預かりデモも可能です。

詳細情報
 

Brukerの最新の CPMAS プローブ(図 3)は、最高の性能、高い信頼性、優れた操作性を実現するために、特許取得済みの独自の技術ソリューションを複数組み込んだ評価の高いiProbe プラットフォームを活用しています。 各 CPMAS iProbe には、自動チューニング、自動マッチング、マジック角の自動調整用のモーターが搭載されています。
Brukerの TopSpin ソフトウェアには、チューニングとマッチング、マジック角の調整、自動シム調整のためのアルゴリズムが組み込まれており、固体 NMR 実験の遠隔操作と完全自動化を可能にします。

CPMAS iProbe は、Brukerの MAS シャトルの使用が可能であり、シャトルはサンプルが入った NMR ローターを CPMAS iProbe 内のステーターに運びます。Sample Caseと組み合わせることで、完全自動のサンプル交換や遠隔でのサンプル交換が可能になります。サンプルを交換するために NMR プローブをマグネットから取り外す必要はありません。

Brukerの CPMAS iProbeでは、固体 NMR 実験でのサンプルの温度可変範囲を最大限に広げ、また、ローター内での温度勾配を最小限に抑えるための、特別な技術的対策がなされています。例えば、CPMAS iProbe では、ベアリングガスが温度制御されており、サンプル温度を最大 200 ℃ まで上げられるようにプローブ内とマグネットボア内のガス流路が最適化されています。マグネット内部への iProbe の取り付けや取り外しは、プローブを室温シムスタックに接続する専用のクイックロック機構により、簡単に行うことができます。

マグネット内部への iProbe の取り付けや取り外しは、プローブを室温シムスタックに接続する専用のクイックロック機構により、簡単に行うことができます。

図 3:Brukerの最新 CPMAS プローブは、評価の高いiProbe プラットフォームを活用しています

アプリケーション

生体系固体のアプリケーション

Brukerの HCN CPMAS プローブファミリーは、複雑な不溶性タンパク質系の研究などの生体系固体のアプリケーション向けに開発されました。 プロトンチャンネルのチューニング範囲を19F を含むように拡張可能です。HCN プローブには、特殊な「低 E -Field」バージョンもご利用いただけます。これらのプローブは、特殊なRFコイルが備わっており、最大の CP 性能と誘電性サンプルでの低損失を両立します。これによりサンプルの加熱を最小限に抑えることができるため、タンパク質やその他の温度に敏感な材料の研究に特に適しています。

非常に速い回転速度でのマジック角回転により、プロトンの信号の線幅が十分に狭くなるため、固体 NMR の新たなチャンスと応用分野が生まれます。プロトン検出で実現する高感度は、天然存在量の多くのサンプルでの研究が可能になります。固体 NMR では全般的に分子サイズの制限がないこともあって、側鎖のプロトンも利用可能になります。それにより構造研究の新たな展望が開けます。

Brukerの 111 kHz CPMAS プローブは 0.7 mm MAS システムが搭載しています。、一方、 160 kHz CPMAS プローブでは 0.4 mm のローターとステーターを使用しています。どちらも生物学的に重要な大きなタンパク質の構造とダイナミクスの研究に使われることを前提に作られています。生体サンプルの高分解能スペクトルの例と超高速回転の利点示す図を図 4 ~ 6 に示します。

材料科学アプリケーション

Brukerの HX プローブ、HFX プローブ、HXY CPMAS プローブ・シリーズは、材料科学アプリケーション向けに開発されています。 代表的なアプリケーションとして、触媒材料の研究やポリマーの研究などがあります。ポリマーでは配向、架橋、その他の局所的な結合特性を観察できます。

Brukerの HX プローブ、HFX プローブ、HXY CPMAS プローブは、低周波、高周波問わず多くのさまざまな X 核の観測に対応しています。医薬品のアプリケーションでは 19F 観測に対応したBrukerのプローブが役立ちます。そのような医薬品アプリケーションでは、例えば、医薬品有効成分のさまざまな多形体を区別することが可能です。これにより出発原料の品質管理や製造工程のモニタリングが可能になります。材料科学アプリケーション向けのBrukerの CPMAS プローブは、上表に示したすべてのローター径に対応しています。異方性の強い系(例えば常磁性環境)の研究では、非常に高速な MAS速度で測定することで劇的な恩恵を享受できます。

図 7 に示すアプリケーション例は、アルミノリン酸骨格を有する AlPO4-14 の MQMAS 測定の結果です。その 2D スペクトルから結晶構造を決定することができます。また、図 7 に示すように、サンプル内の不純物を検出することもできます(赤丸)。他の固体 NMR の手法、例えば、HECTOR のような異種核結合相関実験も、この材料中の Al 原子と P 原子のネットワーク無いの結合性を調べるのに有用です。

図 8 では、MAS 回転を速くすることでよ材料科学実験にどのような恩恵があるかを説明しています。この例では、ランタノイド発光錯体を研究しています。 ランタノイド発光物質は非常に興味深い光物理的特性を有するため、バイオイメージングや固体ディスプレイなどの用途で注目を集めています。 図 8 は、このような非常に常磁性の高いサンプルの実験において、最速の回転速度の恩恵を如何に受けるかを示しています。 低回転速度 (30 kHz) ではスペクトル分解能が極めて低いのに対し、111 kHz ではさまざまなシグナルを明確に識別できています。

―オーダーインフォメーション


カスタム CPMAS プローブもご要望に応じてご利用いただけます。
詳細はBrukerまでお問い合わせください

 

固体NMR用プローブ

ブルカーの固体NMRは、これまで以上に速くストレスなく動作し、融通が利き、さらに自動化が進みました。最新のシステムでは、より磁場漏洩を抑え、外部からの磁場への影響を遮断した28.2T (1H: 1.2 GHz)までの高磁場磁石を提供し、また、最速のMASプローブでは回転速度が10倍近く向上しています。固体NMRは使いこなすのが難しいと言われてきましたが、この融通の利くシステムの登場により、足を踏み入れるのが容易になってきています。

固体NMR用プローブは、様々なアプリケーションを幅広くカバーします。サンプルは、無機化合物から生体試料まで幅広く見い出すことができます。測定も、CP、double CP、MQMAS、REDOR、プロトン異種核デカップリング、あるいはその他の組み合わせ等をカバーします。一次元から多次元スペクトルまで、時間も数分から数日の測定に対応しています。

固体NMRは強力な分析手法であり、CPMASおよびStatic 固体NMRプローブは、多くの研究分野に非常に有用です。

電池
電池のような半秩序 (semi-ordered)または秩序 (ordered)構造を持った材料では、重要な輸送プロセスを測定することができます。電池の電荷輸送を測定することで、その導電性の理由を理解することができます。

ポリマー
ポリマーでは、配向や架橋などの局所的な結合特性を観察し、材料特性と関連付けることができるので、化学設計プロセスのコントロールを向上させることができます。

結晶学
固体NMRは、数理理論化学と並んで、結晶学を支える重要なツールとなっています。

製薬
製薬のアプリケーションでは、医薬品有効成分(API)の様々な多形体を識別することができます。これにより、原料の品質管理だけでなく、賦形剤の影響、製剤工程、APIの結晶形の保管状況などを監視することができます。

タンパク質
固体NMRは、複雑な不溶性タンパク質系の構造およびダイナミクスを理解するための最も重要なツールの一つになりつつあります。

LabScape

磁気共鳴および前臨床イメージング向けのサービスとライフサイクルサポート

ブルカーは、最初のお問い合わせから評価、据え付け、その後装置が寿命を迎えるまでの購入サイクル全体を通して、お客様に比類のないサポートを提供することをお約束します。

LabScapeの保守契約、On-Site、On-DemandおよびEnhance Your Labは、現在の実験室に適した保守とサービスを行うために、新しいアプローチを提供するよう設計されています。