定量的ESR分析によるオリーブオイルの酸化安定性評価
酸化安定性は、食品関連業界では重要な課題であり、酸素、温度、金属の存在、光など、様々な因子の影響を受けます。例えば、エキストラバージンオリーブオイルの酸化は、世界中の流通経路が複雑であることや、個別に容器に詰められた製品であることから、特に注目されています(良くも悪くも最終的な品質が生産者に跳ね返ってきます)。
エキストラバージンオリーブオイルの酸化耐性は、高濃度の一価不飽和トリアシルグリセロールおよび天然フェノール系抗酸化物質の存在に関連しています。ESRは、フリーラジカルを検出し、異なる温度での強制酸化中のオリーブオイルのフリーラジカル形成レベルを測定するための有用なツールです。ESRを食品に応用することで、食品の品質や劣化の原因となるラジカル反応に関する重要な情報を得ることができます。
DPPH法による飲料の抗酸化能の測定
抗酸化物質は、健康を守るために重要な役割を果たしており、がんや心臓病などの慢性疾患のリスクを低減することが科学的に示唆されています。DPPH(2, 2-Diphenyl-1-picrylhydrazyl)はフリーラジカルの一種で、化合物がフリーラジカルの捕捉剤や水素供与体として機能する能力を調べたり、抗酸化能を評価するのに広く用いられています。DPPH消去能評価試験は、抗酸化物質によるDPPHの還元反応に基づいており、食品や飲料の抗酸化能を迅速かつ簡便に測定できる手法です。
ESRで検出されたアラニンラジカルは、照射線量に相当
アラニンは、電離放射線を受けると非常に安定したフリーラジカルを形成します。このアラニンフリーラジカルは、線量に応じたESR信号を出力しますが、線量率やエネルギーの種類には依存せず、温度や湿度にも比較的影響を受けません。このことから、アラニン線量計は、ガンマ線、電子線、X線のいずれの照射施設にも適しています。
医薬品有効成分(API)の劣化を進める、錠剤の充填剤に含まれるラクトースラジカル
ESRは、医薬品化合物の分析に幅広く応用できます。そのアプリケーションとして、APIの光分解や酸化、放射線照射などの滅菌技術の影響、APIと賦形剤の相互作用などがあります。賦形剤は、医薬品の有効性を損なう可能性のあるラジカル化学的な相互作用を開始、伝播、または直接関わる可能性があるため、ESRで研究が行われています。錠剤の充填剤(フィラー)として使用されるラクトース一水和物に由来するラクトースラジカルは、APIと反応して分解を引き起こします。
電離放射線を照射した鶏肉や果物から得られる、非常に特徴的なESRスペクトル
食品照射は、食品由来の病原菌による健康被害を軽減し、保存期間を延ばすために行われます。実際、電離放射線は微生物の分裂を阻害し、放射線分解物やフリーラジカルを生成します。乾燥した環境では、このようなラジカルは非常に安定しています。例えば、放射線を照射した鶏の骨や果物には、ESRで容易に検出できる安定したラジカルが相当量含まれている可能性があります。
ESRで検出されたポリエチレンラジカルによる、インプラントの早期破損の予測
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、整形外科用インプラント業界の標準的なライニング材として使用されてきました。フリーラジカルの生成によるポリマーの酸化劣化は、材料やインプラントの早期老化や摩耗を引き起こし、痛みを伴う炎症の原因となります。ESRは、ポリエチレンラジカルを検出・定量することができ、信頼性の高い正確な測定が可能です。
ESRによるダイヤモンドのN3および窒素-空孔中心の検出
窒素-空孔中心を定量化する明確な手法であり、カラーグレード評価のツールとなります。また、合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドの区別にも使用できます。