世界中のほぼすべての産業と研究の現場において、フーリエ変換赤外分光計「FT-IR」を見つけることができます。その適用分野は、研究、開発、製造、品質管理、故障解析、科学捜査など、非常に多岐にわたり、分析の対象も、医薬品、高分子、土壌、半導体、環境、美術品など、数え上げればきりがありません。
しかし、ここまで広く利用されるのはなぜでしょう?ここでは、FT-IR が活用される 10 の理由を紹介します。
FT-IR は非常に効率的で、分析効率を高めます
FT-IR は有毒な化学物質を必要としません
FT-IR はあらゆる種類の試料に対応します
未知物質の同定は、FT-IR 分光法の最も一般的なアプリケーションのひとつであり、特に故障解析、競合分析、科学捜査などの分野で広く利用されています。
包括的なリファレンススペクトルライブラリーと最新の検索アルゴリズムを用いることで、未知の物質や複雑な物質(混合物)の定性に有用な情報を得ることが可能です。
このように、FT-IR 分光法は消耗品を使用せずに短時間で化学分析を行うことができます。これは特に、微小異物などの試料を化学的に評価する、顕微分析において大きな威力を発揮します。
材料や試料の検証は、同定・定性分析に加えて、産業界や研究における FT-IR の主な役割のひとつです。これは、原材料の化学的同一性やバッチ適合性の確認、完成品の品質管理など、多岐にわたります。
一般的に、入荷品の検査における FT-IR の利用は、適用される最初の分析ツールのひとつです。 FT-IR の簡便さが、あらゆる場所での導入を容易にし、これによる分析結果は、生産のダウンタイムや品質トラブルの発生を未然に防ぐことに役立ちます。
FT-IR は、試料に含まれる複数の成分を同時に定量することもできます。固体および液体試料では多くの場合、パーセントオーダーの定量が可能です。さらに低い濃度の場合は、抽出法を用いるなど、サンプリングに工夫を要することもあります。気体の場合は、はるかに低い検出限界が可能です。
一般に赤外データは、検量メソッドに基づいて校正されます。ここでは、ピークの積分のような一変量法や、部分最小二乗法のような多変量ケモメトリックスアルゴリズムが使用されます。赤外スペクトル分析の大きな可能性は、たった1回の測定で複数のパラメータを決定できることにあります。
試料が小さすぎて分析が困難な場合、FT-IR 分光法に顕微分析を適用することもできます。使用される装置は FT-IR 顕微鏡と呼ばれ、数マイクロメートルの空間分解能で化学分析を行うことが可能です。
通常のマクロ分析において用いられる、透過法、反射法、減衰全反射法(ATR)のすべてが、顕微分析においても利用できます。
FT-IR 顕微鏡と ATR の組み合わせは特に強力で、これにより最小の試料を非破壊で検査することができます。特に広く用いられているのが、微小な異物を伴う故障解析です。
顕微赤外イメージング法を用いることで、分析対象物に関する化学情報をもとにした高解像マップを得ることができます。この技術では、マップを構成する各ピクセルに赤外スペクトルが記録されているため、これをもとに、試料上の注目する場所における化学情報を得ることができます。
また、各ピクセルを、それぞれのスペクトルによって識別された成分に応じて色分けすることもできます。これにより、不均一系試料の組成分布や粒子分析(医薬品、清浄度、マイクロプラスチック)、製品欠陥の検出、多層試料(コーティング、塗膜、積層品など)の構造解析に利用することができます。