XRFは金属、合金、ポリマー、セラミック、地質材料、石油製品、土壌、塗料など、非常に多様な材料の元素分析に使用されています。
お客様の分析ニーズに合わせて最適なソリューションをご提案します。
XRFはX線を使った元素分析法です。高エネルギーの放射線(一次X線)により原子が励起され、最内殻の電子軌道から電子が放出された際に生じるプロセスを利用しています。励起状態にある原子では、外殻の電子が内殻の空孔へと遷移することでエネルギーを基底状態にする現象が起こります。このエネルギーの緩和過程で蛍光X線が放出されます。これらの現象は、試料に何かが触れたり、試料に損傷を与えることはありません。
放出される蛍光X線は、原子に特有のエネルギーを示します。銅の蛍光X線は、亜鉛の蛍光X線や周期表の他の元素のそれとは全く異なります。そのため、蛍光X線法は最も簡単で便利な元素分析手法の一つとして知られており、様々な産業、研究、教育用途に使用されています。蛍光X線分析では測定試料中の主要元素、微量元素に関する定性的、半定量的、定量的情報を得ることができます。
XRFは色々な場面で使用されます。例えば、 微量に含まれる不純物の元素分析、セメント工場での検量線法による高精度な定量分析などがあります。故障解析と生産管理、あるいはスクラップヤードでの金属の選別や、発掘現場で岩石を事前にスクリーニングことにも利用されます。
XRF装置には試料中の原子を励起するためのX線管球と、蛍光X線を検出するための検出器が搭載されています。X線管球は水冷式の4,000Wの高出力なものから、携帯機器用で親指サイズの4Wのものまであります。検出器側には2種類の方式があり、エネルギー分散型(EDXRF)と波長分散型(WDXRF)があります。光子のエネルギーEと波長λの間にはE = (c∙h)/λ という関係があり(cは光速、hはプランク定数)、光子をEあるいはλとして分別する検出方法で大きく異なります。
波長分散型の装置では、X線を波として扱い、分光結晶を用いてX線の回折現象を起こすことで、驚くほど高い分解能を実現します。エネルギー分散型装置の検出器は、X線を粒子として扱います。これは、ボーリングの玉(光子)をボールプール(検出器)に投げ入れ、その衝撃で放出される小さなプラスチックボール(電子)の数を数えているようなものです。ボーリングの玉が重かったり速かったりすると(エネルギーが高いほど)、より多くのボールが放出されるイメージに似ています。
XRFの技術は分析目的ごとに応用されており、装置の種類がいくつかあります。高感度なTXRF、高精度なWDXRF、また、手を触れずに保管しなければならない貴重で繊細な物体にはMicro-XRF/Macro-XRF、工業プロセスで使用される材料やそれに由来する材料向けには、直接励起や偏光励起といった光学系のEDXRFなどがあります。試料に含まれる全元素の濃度を正確に知るにはWDXRF、試料中の含有物の位置を正確に知るにはMicro-XRFなどが最適です。多くは実験室用の装置ですが、片手で持ち運べるハンドヘルドXRFなどもあります。
いくつかの技術は、産業品質管理プロセスにおけるISOおよびASTM規格でも採用されています。また高い汎用性のため、研究開発や研究所において頻繁に使用されるようになっています。
分析の要求仕様により最適なXRF装置をご提案します。
光学系方式 | ポータブルEDXRF | 卓上EDXRF | 卓上EDXRF | 卓上EDXRF | 卓上EDXRF | 卓上WDXRF | シーケンシャル型 WDXRF |
サイマル型 WDXRF |
直接励起EDXRF | 偏光励起EDXRF | マイクロXRF | 全反射XRF | |||||
固体試料 | +++ | +++ | ++ | +++ | ++ | +++ | +++ | +++ |
液体試料 | + | +++ | +++ | ++ | +++ | +++ | +++ | - |
元素範囲 | (F)Mg-Am | (C)F - Am | Mg-Am | (C)Na-Am | (Na)Mg-Am | (C)F - Am | (Be)B - Am | (Be)B - Am |
可搬性 | +++ | + | ++ | ++ | (+)+ | + | - | - |
速度 | +++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | ++ | +++ |
正確度&精度 | + | ++ | +++ | ++ | ++ | ++ | +++ | +++ |
2次元空間分解能 | ++ | + | - | +++ | - | - | ++ | - |
濃度範囲 | Ppm to wt.-% | Ppm to wt.-% | Sub-Ppm for S, Cl, P | Ppm to wt.-% | Ppb to wt.-% | Ppm to wt.-% | Sub-Ppm to wt.-% | Ppm to wt.-% |
詳細 | Portable XRF | Direct EDXRF | Polarized EDXRF | Micro-XRF | TXRF | Benchtop WDXRF | Sequential WDXRF | Simultaneous WDXRF |
卓上タイプのエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDXRF)は、コンパクトで比較的シンプルな光学系です。50WのX線管で試料中元素を励起し、シリコンドリフト検出器(SDD)で蛍光X線光子の数とエネルギーを記録します。SDDはエネルギースペクトル全体を一度に記録するため、複数の元素を同時に検出することができます。直接励起EDXRFは、近接しているビームパスを利用し、液体、粉体、粒体、固体、バルク試料などの主要元素、微量元素を測定できる汎用的な装置です。偏光励起EDXRFは、単色X線を利用して石油化学製品中のS、P、Clなどの元素のS/N比を高め、小型装置でありながら超低検出下を実現しています。
最小のXRF装置はバッテリーで動作し、片手で持ち運べるほど小型です。それでも、数秒以内に鋼種などの物質識別が可能です。ハンドヘルドXRFは、大型のEDXRF装置と同じ光学系構成ですが、非常に小さな容積に収められています。その大きさにもかかわらず、マグネシウムから始まるすべての元素に対して非常に正確で高感度です。これは当然ながら管球と検出器が試料に非常に近い位置にあるためです。そのため、スクラップヤードで金属の選別のために持ち運ぶだけでなく、地質探査の現場で微量元素の分析に使用することも可能です。
マイクロXRFは、励起X線をポリキャピラリーレンズで試料上のマイクロメートルサイズのスポットに導くEDXRFです。試料にどんな元素がどれだけ含まれているかだけでなく、その元素がどこに存在するかを正確に知ることができます。特に高速スキャンステージと組み合わせることで、不均質な試料の測定や表面解析に最適な装置となります。マイクロXRFでは、固体、粉体、液体など、ほとんどすべての種類の試料を測定することができます。また、他の蛍光X線分析法と同様に、測定中に試料が損傷することはありません。このため、マイクロXRFは科学捜査をはじめとして、理想的な事前スクリーニングの分析手段となっています。また、地質学においても、非破壊分析の用途に適合しています。
全反射蛍光X線分析法(TXRF)は、S/N比と検出限界を最適化するために、あらゆる工夫が凝らされています。他のすべてのEDXRF技術と異なる点は、入射角が非常に浅いことです。この特殊な入射角によって、単色化された励起X線が滑らかな基板で全反射することがその名前の由来となっています。この光学系には、主に3つの利点があります。
・基板中に入射することがなく、基板からのバックグラウンド散乱の信号がない。
・全反射されることで、励起光は基板上にある試料を2回通過する。
・X線ビームが片側から反対側に向かうので、検出器を試料表面の極近傍に設置でき、励起X線ビームを遮ることがない。そのため、試料から発生する蛍光X線のほとんどをSDDで収集することができます。マイクロリットルやマイクログラムといった微量の試料を定量化することができ、最小限の試料調製でppbオーダーの検出限界を達成することができます。
波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)は、EDXRFと比較して、より高度な装置構成により、1~2桁の高感度化を実現しています。WDXRFは、強力なX線管球(最大4,000W)、複数の光学部品(管球フィルター、コリメーターなど)を備え、分光結晶を使用して、試料から放出された蛍光X線をその波長に基づいて分離(ブラッグの法則)します。シーケンシャル型の据置WDXRFや卓上WDXRFにはゴニオメーターが搭載されており、波長ごとに角度と結晶の種類を適宜変更し、元素濃度を順次測定していきます。サイマル型WDXRFでは固定チャンネルを利用して複数の元素を一度に測定することが可能で、最短の測定時間を実現します。
XRF は、元素分析が不可欠な環境において、数え切れないほど様々な用途に使用されています。鉱業、セメント・建材、石油化学・ポリマー、食品・動物飼料、金属製造などのプロセスモニタリングや品質管理はその代表例です。ポータブル装置は、現場での探査活動や金属スクラップの選別に特に有効です。また、美術品、保存修復、考古学、科学捜査の分野でも頻繁に使用されています。汎用性と試料調製の簡便さにより、XRF は多くの研究室や政府機関、学術・研究機関にとって不可欠なツールとなっています。