NMR(核磁気共鳴)は核の磁化を直接観測することができる分光法です。観測された信号は、化学シフト値から官能基の種類を、Jカップリングのパターンから隣り合う構造を、そして信号の面積を比べることで化合物の原子数の比を、それぞれ求めるために用いることができます。とくに信号面積は同一分子内に用いるだけではなく、異なる分子間のモル比を算出するのに用いることもできます。この分子間の信号面積の相対比較を応用し、既知濃度の化合物に由来する信号を基準として、未知濃度の化合物の濃度(または未知濃度の試料量)を求めるアプリケーションは近年広く利用されるようになり、「定量NMR」と呼ばれ注目されています。 「定量NMR」では多くの場合、S/N(信号対ノイズ比)を増補するために積算(繰り返し測定を行い、信号を足し合わせること)を行いますが、目的に合わせて精度高く定量を行うには積算に関係するパラメーターだけでなく、様々な分析条件の最適化が求められます。また特に初めて定量を行いたい化合物を対象とした場合、試料調製から測定やデータ処理の条件など、すべての段階においての事前検証も望まれるため、知っておくと有利になる予備知識がたくさんあります。 このWebinarでは、積分値を用いて具体的な定量評価を行うまでに各段階でどのような点に気を付けて作業をおこなうのか、主に測定や処理のパラメーターについて具体的な操作を紐づけしながら紹介します。
化合物にどんな官能基が何個含まれるのか?反応の収率、副生成物は何%か?構造の確認、だけではなく「NMRを用いた定量」は古くから広く知られている方法です。しかしながら、手元の試料と装置でいざ自分が定量を試そうと思ったときに、何に注意を払って測定・評価する必要があるでしょうか。今回のWebinarでは定量NMRで必要な予備知識を段階ごとに説明し、その手順を紹介します。
平野 桐子
バイオスピン事業部 アプリケーション部
金場 哲平
バイオスピン事業部 アプリケーション部