核磁気共鳴(NMR)法はスピン量子数(I)が1/2より大きい原子核を検出する。汎用的な検出器を用いると一つの検出器で60以上の核種にチューニングでき、それぞれの核種由来のNMRシグナルを検出できる。その中でも、スピン量子数が1/2であり、磁気回転比が大きく、かつ、天然存在比の高い1Hは最も幅広く用いられている核種である。 水素原子を多く含む低分子の有機化合物のNMR解析には1Hスペクトルおよび1H検出の二次元NMR実験が必須となっている。これらの測定は弊社のNMR測定用ソフトウェアTopSpinとIconNMRに標準搭載されているパラメータセットを用いることにより、ほぼルーチン的に、かつ、自動的に行えるようになっている。また、得られたスペクトルのシグナルの帰属や構造解析は弊社製ソフトウェアCMC-assistやCMC-seを用いて半自動的に行うことができるようになってきている。 一方で水素原子が少ない化合物ではルーチン的な1H検出の実験を有効に利用できないことがある。その結果、1H-1Hや1H-13C相関を用いた連鎖的なシグナルの帰属が困難となり、NMRによる構造解析ができない。しかし、解析をあきらめる前に、①サンプル調製の工夫、②ルーチン的な測定のパラメータの変更、③ルーチン的な測定以外の測定法などのようにいくつか試すべきことがある。本Webinarでは、食用の色素を題材として、このようなアプローチで行った解析例について解説する。本Webinarが実際にNMR解析に苦慮されている方々にお役に立てれば幸いである。
本Webinarでは水素原子の数が少ない分子の構造決定へのアプローチについて説明する。水素原子の数が多い低分子の有機化合物のNMR実験は弊社が提供する標準的なパラメータセットを用いることにより、ほぼルーチン的に行うことができる。ところが水素原子の数が少ない場合、
これらの標準的な測定では解析が十分に行えず、より高度な測定を求められることがある。そこで、今回は色素を題材として、このような問題に対処するために、サンプル調製の工夫、必要なNMR実験、解析の進め方などを紹介する。
金場 哲平
バイオスピン事業部 アプリケーション部
佐藤 一
バイオスピン事業部 アプリケーション部