固体動的核分極 (DNP) NMRはシグナル感度の著しい増大(しばしば数桁のオーダー)をもたらし、かつて測定することが想像もできなかった実験を現実のものにしています。本Webinarは、DNPを専門としない方、そしてDNP技術やその必要条件、そして、ご自身の研究分野にどのように適用できるかを学びたい方にDNP測定をご紹介いたします。 また、固体DNP NMR構成とともに、様々なサンプル調製方法や、生体および材料科学の分野での応用例を交え、DNP測定についてご説明いたします。
本Webinarは、DNPを専門としない方のために固体DNP NMRをご紹介いたします。取り扱われる題材は固体DNPの分野に踏み込まれている方、または固体DNPがどのようにご自身の研究分野に適用できれば結果として研究のニーズに合うようになるのかと熟考されている方に興味あるものにしています。 固体DNP技術は電子スピンから核スピンへの分極の移動を利用します。電子の高い磁気回転比(γ)によって、電子は原子核よりはるかに大きな分極を持ちます。そして、この大きな電子の分極がプロトンに移動すると、プロトンの最大感度は理論的には両者の磁気回転比の比γe/γHに相当する約660倍に増大します。 このように分極移動は単位時間当たりの感度増大をもたらし、かつては長時間測定が予想され、実行することが不可能であると躊躇されていた実験が現実的なものとなっただけではなく、時間効率よく行えるようになりました。DNPによるシグナル感度の増大は、幅広い材料科学分野のサンプルの他に、タンパク質、膜、および複雑な生体集合体(たとえば、アミロイド線維、ウイルスの外殻タンパク質)のような生体固体材料を研究するために用いられてきました。
マイクロ波の発生源のジャイロトロンから、100K付近でのマジックアングルスピニング(MAS)が可能な低温MASプローブを含むDNP測定システムを、適切に使用するための方法とともにご説明いたします。ハードウェアに加え、シグナル感度の増大のためには、サンプル内に不対電子がなければなりません。もともとラジカルをもつサンプルを除いて、ラジカルまたはバイラジカルが一般的にはDNP測定サンプルに加えなければなりません。そして、ラジカルをサンプル内に均一に分布させるための様々な方法があります。それらの方法につきましては、サンプル調製の道具や、サンプルの取り扱いのコツとともにご紹介します。
こうした全ての技術がまとめ合わされた結果、これまでに生体および材料科学の分野で一連の適用例が報告され、DNPによる感度上昇された固体DNPNMRは科学の根本的な問題を解決するために威力を発揮しています。
畑中 稔
ブルカージャパン バイオスピン事業部 アプリケーション部
木村 英昭
ブルカージャパン バイオスピン事業部 アプリケーション部